Daryll-Ann : Seaborne West
ARTIST / Daryll-Ann
TITLE / Seaborne West
LABEL / hut recordings
DATE / 1995
TITLE / Seaborne West
LABEL / hut recordings
DATE / 1995
2118。過去盤レビュー。堂島のジュンク堂と同じフロアにあった小さなCD屋で、その店自体には入ったこともないと思うが、その店先で、よくある輸入盤のワゴンセールをしていた。何年前か覚えていないが、その頃が僕のディスカフォリックの頂点であり、なりふり構わず、とりあえず買っていた。で、ジャケ買いをした。通常は、レーベル買いするんだが、そのワゴンに知ってるレーベルはなく、仕方なく購買欲を落ち着かせるために、10枚かそこら買ったと思う。中心は紙ジャケというか、それに類するやつ。好きだったレーベルが、そういうジャケであることが多かったからね。Tortoiseとかね。で、結果は惨敗だった。ほとんどが聴けたもんじゃないというか、好みじゃないというか。その中で唯一、これは、と思ったのが、名前も何も知らずに買った本作。これがなかなかするめ盤でして、Daryll-Annってなにゃねんとか思いながら、当時は、インターネットも気軽に見れなかったし、調べることもできぬまま。でも良く聴いた。前置きが長くなりましたが、Daryll-Annはオランダのバンド。1988年結成、2004年に解散している。メンバーは、Jelle Paulusma(ボーカル、ギター)、Anne Soldaat(ギター)、Jeroen Vos(ベース)、Jeroen Kleijn(ドラム)。曲と詞のメインは、PaulusmaとSoldaat。特に際立って歴史的な痕跡を残すタイプのバンドではないし、演奏が卓抜なわけでもない。でもでも、だ。こんなにも良い盤ってあるかね。まさに埋もれている名盤といいたくなる。評価されているわけでもなんでもないんだけど、個人的なジャケ買いの打率の低さに対する意地が響いてるとかではないと思うのだ。ちょっと間抜けなボーカルに載せて、すごくスタンダードに良い曲が並んでいる。M1のさわやかさといったらないし、M4のドラマチックさったらない。全曲良いといっても良い。名曲を書く、とは、名曲を書こうとしないとかけないのである。Daryll-Annに遊びはないと思う。がちで名曲を書きにきている。それが伝わるわけだ。オランダという音楽シーンとしては、ほぼ無視されている国で(もちろんマイナなシーンにおいてはstaalplaatなんかのレーベルが長いことオランダを拠点にしていたしVPROではマニアックな録音が残されて[Mort Aux Vaches]シリーズになってるわけだが)、奇跡のような名曲量産型ロックバンドがいたことを是非日本の皆さんに知ってもらいたいところである。で、面白いエピソードもある。実は本作がなかなか良いと、Lサイドと適度に会話をしていてしばらくあったあと、僕たちは彼らの盤に思わぬ形で遭遇する。2000年。高槻の今はなきWAVEにて、彼らの1996年の3rd"Weep"と1999年の4th"Happy Traum"が日本盤で棚に並んでいた。しかも試聴できる状態で。つまりレコメン扱いで。まじかと思った。何きっかけかさっぱり分からなかったけど、彼らの時代が来ていたのだ、というか、僕たちの先見の明はやはり確かすぎるぜ、と思ったものである(どうも今、google先生などで調べてみると、Tahiti 80がフェイバリットにあげてるとかいう話。その辺の関連なのかもしれないな。時代的にも)。でも、もちろんそれでDaryll-Annが日本に一気に広がるなんて話はないわけで、結局どういう扱いなのかも分からぬまま、彼らは消えていったのは、皆さんがおそらくDaryll-Annを知らないだろうから、そのとおりなのである。そんなもんである。解散後、メンバーはソロ活動やらなんやらで適度に仕事もあるようだ。僕はきっと忘れないよ。君たちの残した音楽を。賞賛に十分値するんだってことを。このレビューが、初めて効力を発揮できるように。日本の誰か数人にでも、この熱烈な推薦文が届きますように。