Gastr Del Sol : Camoufleur
ARTIST / Gastr Del Sol
TITLE / Camoufleur
LABEL / drag city
DATE / 1998
TITLE / Camoufleur
LABEL / drag city
DATE / 1998
[21-71]。過去盤レビュー。名盤ですね。Gastr Del Solでもっともポップで効きやすく、その後のシーンを彩った1枚ではなかろうか。玄人的発想で行くならば、それこそ、本作より前の諸作に歴史の針を突き刺せて固定し、パルプボードで思い出をつづるのがよくある話。ただ、やっぱりこの1枚が強烈に輝き、多くの人たちへと開かれたからこそのGastr Del Solである。ただのマニアックなユニットではないということ。これ大事。時期的には、シカゴのシーンもかなり固まりつつあり、あるいは拡散しかけている1998年。楔としては重要である。 David GrubbsとJim O'Rourkeは、OvalのMarkus Poppも仮メンバーのように組み入れることで、電子的に新たなアプローチを見せている。ここで、Ovalって何で??あるいはOvalって何?っていう人たちは、ミレニアム直前の特殊で局地的なシーンの勉強が足りないといえる。Markus Poppがいることで、本作の時代的な意義は極度に跳ね上がっている。もちろん、John McEntireも太鼓をたたき、O'Rourkeと同じように複数曲で、録音も担当。地元の強みを生かしたRob Mazurek(コルネット)をはじめとするインプロプレイヤーたち、たとえばJeb Bishop(トロンボーン)、Julie Pomerleau(ヴィオラ)、Ken Vandermark(クラリネット)も配置。また友達みたいなもんとしてEdith Frostや、Stephen Prinaも「やってるかい」といった具合にボーカルで参加したり。ちょっとたどたどしい演奏が祝祭でシカゴの穏やかな休日を演出している。しかしその裏で研ぎ澄まされた職人たちが、手抜かりなく仕事をしているイメージ。これぞ、あるべきポップアルバムなのである。小難しいことをやってくれ、しかしばれるな。合言葉はこれである。John Fahey的でもあり、Stereolab的でもあり、裏表O'Rourke的でもあり、直球Grubbs的でもある。ポップスの音楽史を書くとき、本作を書き飛ばすことに何の不満もない。それでも、この1枚は特別になり続け、特別に訴求性をもち、特別なままで、鳴り続けると思う。そしていつか、O'Rourkeがグラミーをとったとき、あるいがGrubbsが自分の余りある才能に見合う余技でもって聴衆へと降りてきてくれたとき、本作は奇跡的な1枚だったということに気付かされるに違いない。決して遠くない未来で待つ。