The Millennium : Begin
ARTIST / The Millennium
TITLE / Begin
LABEL / columbia
DATE / 1968
TITLE / Begin
LABEL / columbia
DATE / 1968
[27-71]。過去盤レビュー。以前紹介した盤"Again"。Curt Boettcher率いる奇跡のような集団。このただ1枚を残しただけで、その名をポップス史に刻みこんだ。すごいね。中村一義が、ワンフレーズを拝借しているってところから、The Millenniumに手を出したんだけど、ただのコーラスグループではあるまじき、アレンジ力と曲の完成度に唖然でした。Curt Boetthcerが2000年前後に再評価されたのも、追い風になりました。もちろん90年代に渋谷系界隈で本作をはじめとするハーモニーサウンドは一気に日本でも広がりを見せたわけであるが。本作には、コーディネーターという立場でBoetthcerとは前年にはSagittariusとして仕事をともにしたGary Usherも参加。プロジェクトは異様な盛り上がりを見せる。この盤について、言及するとき、もっとも頻繁に語られるのは、初めて16chで録音されているということ。音は重ねに重ねられ、当時としては極めて緻密で分厚い音に仕上がっている。もちろんそのようなテクニカル論ってのは、裏方で騒げばよいことである。でも、そのような試みを試し、謎のサウンドをぶち込むことで、世間的には「実験的」という便利な慣用句でもって先進性をたたえられるに至っているのだから良しとしようではないか。もちろん、そのような実験的要素なんてものは、「当時にしては」といってしまえば、もはや過去化され、現在性を剥奪されてしまう。そのようなアプローチでは本作の歴史性を云々できたとしても、本作を今聴く意味が消えてしまうんだ。でも本作は今聴いても、プログレッシブなポップスを鳴らしている。それは、技術云々ではなく、モダニズム的な意味でいう中心をもったポップネスに裏打ちされるような強烈な旋律への確信である。本作は、まるでクラシック音楽のようにプレリュードをイントロとして配置し、M8の'It's You'をはじめとするきらめきで偽装した邪悪なアレンジを持った曲をこれでもかと置いている。それぞれのアレンジを抜き出したら、そりゃもう古びたアプローチにだって聴こえるだろう。それでもなお、強靭なポップネスでもって本作はモダニズム的中心を獲得するのである。われわれが信じるに中心を。贅沢である。本作1枚で力尽きたのもわからないでもない。新鮮とかそういう話じゃないんだ。もう分かるだろう。信じられる。宗教の話をしているんだ、僕は。