Radiohead : Kid A
ARTIST / Radiohead
TITLE / Kid A
LABEL / parlophone
DATE / 2000
TITLE / Kid A
LABEL / parlophone
DATE / 2000
1763。以前紹介した盤"OK Computer"。これほど語りやすさを秘めながら、語りにくい盤はない。それは僕の個人史に深くかかわりすぎているからであることは言うまでもない。本作は、このブログを形作る根源になっているといっても良い。僕の興味のほぼ大半を占めているかのようにかんぐられる電子への欲望は、おそらく本作からの流れによって規定されている。本作が語られやすいく、これまで何度も言及されてきたその影響関係の語られが(それが事実かどうかはさておき)、僕にAphex Twinという絶対的アイドルへの道を開いた(僕は、その作家の名前だけを取り出し、Richardのアンビエント作品に接近するには少し間があいたがそれも運命が味方した)。それまでのギターバンドから脱却し、エレクトロニクスを導入してみる。そんな、よくある図式が、僕が信じていた当時のポップスすべてをくだらなくした。本作は売れた。それだけ、完成されたポップス性を備えていなければ、僕たちはただ頭を傾げるだけだったに違いない。加工されたTomの声は、これまで同様何かしらのポエジーに近接していた(のだろう)。すべての曲が、今思えば、どこまでもRadioheadでありながら、誰よりも20世紀のポップスを乗り越える力に満ちている。いや、その言い方は誤解があるのかもしれない。言い換えるならば、20世紀に取り残されそうになっていたプログレッシブな音楽を商業ベースに乗っけたというべきか。つまり、"Kid A"はまったく新しくはないが、圧倒的なマッスに「Neu!」とユリイカさせるポップス性を持っていた、ということ。それに尽きるだろう。そのマッスのなかでオナニーしていた僕は、その新境地のエロスに出会い、恋に落ちる。なんてことはない、時代はそうやって作られるのである。ただし、本作が残した現在ないし後世への影響を汲み取ることは難しい。フォロワーを生むには、本作は金がかかりすぎた完成品であった。