Tortoise : S/T
ARTIST / Tortoise
TITLE / S/T
LABEL / thrill jockey
DATE / 1994
TITLE / S/T
LABEL / thrill jockey
DATE / 1994
2112。Lサイドによるレビューはこちら。過去盤レビュー。記念すべき1st。時代は1994年、Nirvanaが沈黙し、強烈な指針を失ったなかで、地下では小さな胎動があった。予感という「次の話」にもっとも呼応する感覚を強くする。そんな第一歩である。ちなみにSchellacの1st"At Action Park"も同時期。何が起きようとしているのだろう、とふとヒロイックに空を見上げた。幾人もが。シカゴという寂れた街で。 この頃の布陣は、Dan Bitney、Douglas McCombs、John Herndon、Bundy K. Brown、John McEntire。Danはsst系のハードコアバンドTar Babiesから、McCombsは80年代から現在まで続くEleventh Dream Dayから、Herndonはグランジ風味のPoster Childrenから、BrownとMcEntireはBastroを経由して、初期Gastr Del SolでGrubbsとともに1993年の傑作"The Serpentine Similar"踏み台にして、そして亀化した。なんとも奇妙な組み合わせて出来上がっているようで、すぐさまにTortoiseとして鳴らしている彼らの共通認識はすごい。そこでは、ロックに対する「次の話」として郵便化した。そんな1994年である。なんてエロい話でしょうか。Brownは1995年に離脱するが、TortoiseはMcEntireによるソーマ・スタジオでのデジタルな録音手法によってそのスタイルをよりダブダブした方向で処理し始めたあたりで、彼らに追従できるものはいなくなった。なんとかフォローしようという動きは、批評家たちによって、彼らの周辺プロジェクトが暗躍するシカゴというシーンのもとに一塊にされたけれども(人はそれをポストロと呼ぶ)。で、だ。Tortoiseが、そのスタジオな手法を先鋭化させるとともに、ファンは拡大し続けていくわけだけれども、本作で聞かせる「演奏」は、決して忘れ去られてはいけないロック的性質のもとに、彼らの革新であることは忘れてはいけない。彼らがスポーティな、あまりにもスポーティな、ハードコアないしそれに比類するエネルギッシュなスタイルから、まるで1000年生きた亀のような境地に至る違和感というものをつなぐのは、彼らの筋肉質な演奏なのである。彼らのライブを見ればすぐに分かることだけど。そして、何度も強調するけれども、全ての楽器が、リズムパートも含めて等価な価値を持って響きを獲得するという意味で、日本では「音響派」という言葉とともに、さらに曖昧な存在として、われわれのもとに届けられた。じゃあそういうわけで。歴史的名盤ということで。全世界のみんな、これからもよろしく。