中村一義 : 太陽
ARTIST / 中村一義
TITLE / 太陽
LABEL / マーキュリー
DATE / 1998
TITLE / 太陽
LABEL / マーキュリー
DATE / 1998
2153。『金字塔』で僕たちの世界をがらがらがらぽんぽんぽんとしてしまい、多分、日本のポップスシーンにもパンケーキ程度の衝撃を与えたはずでした。そこからは、シングルがリリースされるたびに、テンションをあげて、そして、次はいつだ次はいつだという予感に満ちた日々を与えられた。僕たちは若かったけれど、その糧は、楽しかった日々をよりいっそう固く強くしたと思う。そしてたった1年でリリースされた2nd。決して悪くない。彼の原点に忠実でありながらも、ただの引きこもりではなく中井戸麗市や、高野寛や、UAなんかを手がけた朝本浩文や、サニーデイ・サービスの曽我部恵一なんかが参加したりしている。中村さんかっけー、がんばってるーという一方で、今思えば、あれ、どうしちゃったの、孤高の戦士はどこへ行こうとしているの、という気持ちもあったのかなかったのか。それでも、本作ではまだまだ過去への敬愛を引っさげつつ、その非凡すぎて余りある才能を博愛の名の下に還元し、中村一義でしかない音楽を作っている。他でもない彼が歌っている。そんな1枚である。逆光を背負って笑う彼の姿は、今後の展開を予感させるような、まさに音楽によって救われた1人の人間の姿を感じることができる。これでよかったのだ、と半ば信者のような位置づけであった僕たちは、首肯を重ねる。これでよかったと。ちなみに「再会」という曲も収録されている。本作でよく響くのは、シングルカットされている「歌」「笑顔」だろうか。度直球の名曲を書こうとして書かれた名曲だと思う。全体を通して、歌詞が平易になり、多くの人に平均的に届けようとする工夫を感じる。それが、どうも、僕としては、今聴いてみたところで、ぴぴぴとは来ない。『金字塔』であけすけに、恥じらいもなくさらけ出した中村一義の言葉はここでは、優しさからか、商業的戦略からか、とても僕たちへと降りてきてしまっているようだ。だから響きにくい。よくある話だと。当時、彼は結婚をしたかするかで、本作のラストを飾るM15「いつも二人で」はそのパートナーであると思われる早苗さんとの共作である。この曲は、当時もかなり好きだったが、今も、詞はシンプルながら、力があり、心があり、そして愛がある。「愛といたように」という語感に、語られない多くが加えられる。愛が加えられている。最後の連で一気に本性を見せる中村一義らしさは、あらぬ方向で、時代を挑発する3rdへと準備されるのであった。