Caustic Window : Caustic Window LP
ARTIST / Caustic Window
TITLE / Caustic Window LP
LABEL / rephlex
DATE / 1994 / 2014
TITLE / Caustic Window LP
LABEL / rephlex
DATE / 1994 / 2014
2248。全ては仕組まれたプロモーションだった、金のために。といっても不思議ではないようなやり口でもって、我らがRichardは念入りに、絶妙すぎるセンスでもって時を待っていたのかもしれない。本作がリリースされるってのも、狡猾な2次使用のやり口だ。私家版として5枚かそこいらしか刷られなかった本作の中の1枚がdiscogsに13500ドルという禿げた値段で出品された。それがWe Are the Music Makersの企画により共同出資サイトとしてガジェットものではなかなか影響力を発揮し始めているkickstarterを通して、共同購入され、そして本作がデジタル音源の形で出資者に対してダウンロードが許された。集まった金は47000ドル以上。その後、出品された当該の1枚はebayに出品され、minecraftを作った著名なゲームクリエイターMarkus Perssonによって46300ドルで売却されたという。もろもろの差額のいくらかはRichardへ、チャリティへ、などと使われたらしい。誰が数少ないレアな1枚を出品したのか。誰が本作でもって一番金をせしめたのか。道楽には金が必要だ。音楽には金が必要だ。それがこの世の中の文化を醸成し、庶民へとそのいくばくかの恩恵を与えている。パトロンがいない時代、われわれはその対価を自分たちないしその関係者による労働、ないし邪悪な手段でもってあがなっているのだ。しかし、本作の驚きってのは、その後に粛々とばら撒かれているキャンペーンへの気付きへの取っ掛かりに過ぎなかった。Richardの誕生日である2014年8月18日、Aphex Twin名義では"Druqs"以来13年ぶりのリリースとなる"Syro"が発表された。え、このタイミングですか、という肩透かし感と、意外性を通り越して現実感さえ沸かない事実に、現代のモーツアルトに許された戯れを超えた悪ふざけすら、どこか遠いで惑星での話であるかのように、黄色くかすんでいる。てか、なぜ黄色いんだよ。確かに今年の流行のカラーは黄色だぜ。何が何だか分からないまま、われわれは9月のリリースをこれ以上ないほど浮き足だった状態で待っているのである。さて、そんな踏み台としてふさわしすぎる役割を果した本作ですが、面白いリイシューであるけれども、どこまでいっても幻の音源と、90年代初頭の憧憬によって、彩られている。Richardが好きなら、あるいはその歴史を感じたいなら、最高の教材のような音を出しているのは間違いない。無骨であり、衝動的であり、お洒落であり、馬鹿げていて、その後にRichardがAphex Twinで描こうとする源泉を見て取れないではない。大げさな言い方をすれば、あるいは本作だけで2014年が終わっていたならば、あまりにも感動的な1枚だ。しかし、本作はやっぱりただの踏み台に過ぎない。世紀の駄作か、ちょっとした生活費のための1枚か、それとも余技でもって繰り出された傑作か、どういう1枚がリリースされるかしらないけれど、僕たちには近い未来にすでに"Syro"を与えられられる予定なのだ。待ったぜ。(ちなみにkickstartaer経由でデジタル音源を焼く用の盤面デザイン済のCDRとジャケを注文したのに、まだ届かないってのはふざけている)