Jim O'Rourke : Kid To Break
ARTIST / Jim O'Rourke
TITLE / Kid To Break
LABEL / steamroom
DATE / 2014
TITLE / Kid To Break
LABEL / steamroom
DATE / 2014
2361。2016年6月現在までに29作リリースされているJim O'Rourkeのsteamroomシリーズ。リリースはBandcampを通じてひっそりと行われていて、クソほども売れていないらしく、インタビューでその苛立ちを隠さないO'Rourkeさんはなかなか面白い。そりゃあ、まあ売れにくいタイプの音源集だと思います。無料でストリーミングできるわけで、これをウェブ空間上から切り離してわざわざポータビリティを与えること、デジタル素材として所有することへの欲望を掻き立てられはしないだろうと。O'Rurouke先生の日本での生活を支えるために1枚につき7ドル払いましょうという方々によって支えられているプロジェクトなわけです。そんな作品集だから、コマーシャルな状況が作り出されることもない。ただただ、たんたんと、O'Rourkeさんが飽きるまでその営為は続けられる。そんなまったくペイバックの望めない楽曲群ですが、その状況に業を煮やしたかのように、彼はライブ会場限定で、CDへとダウンプロダクトした5作を販売しました。そのうちの1枚がこれ。steamroomの13枚目に当たります。全1曲35分。2014年の4月から6月にかけて作成されてようです。丁寧で繊細に、ビートレスで、ハーシュノイズやグリッチ音が鳴らされている。O'Rourkeさんが昔から取り組んでいるタイプの電子実験音楽の延長にあるでしょう。中盤にいたるまでかなり抑制されていますが、そこから音の波は力を取り戻し、強くなり始めます。好きな人は、永遠に空間に鳴らしていて満足が得られるわけだ。こんなにも良いけど、売れない。その理由はなんら不思議ではないわけで、これが作家の趣味の極地だからだろう。そして、このような音楽の形が、インターネット時代における音楽産業の霧散を象徴しているのだと思う。誰もがインターネットアーティスツだ。しかし、それは職業ではない、という。とても良い音楽ですよ。