John Beltran : Moving Through Here
ARTIST / John Beltran
TITLE / Moving Through Here
LABEL / apollo(r&s)
DATE / 1997
TITLE / Moving Through Here
LABEL / apollo(r&s)
DATE / 1997
2366。以前紹介した盤"Americano"。今更ながら続くJohn Beltran収集。本作は傑作と名高い2nd"Ten Days Of Blue"の翌年にリリースされた3rd。前作の評判を受けてか、日本盤もリリースされた模様。ただ、本作でBeltranはやや作風を変えているというか、ボーカルやホーンの音色を割と積極的に採用するなど、生音への意識を高めたアプローチで、サウンドも軽くなり、個人的な好みからは離れているような印象。つまり俗にいうフューチャージャズのような潮流にでも乗っかろうとしたのか、これがBeltranの多彩さを証明する形であるだけでなく、本性を見えにくくした可能性もあるのではなかろうか。さらになんとなく手を出しているかのように見えて、壮大な1曲として成立させているM4のドラムンベースのようなアプローチもある。同時代の兆候としては、たしかにAphex TwinがSquarepusherらの交流のもとでドリルンベースなるスタイルを完成させてしまい、シーンはその孤高のやり口にノックアウトされた時期ではあったと思うし、それにいくらか惑わされる作家も少なからずいたと思う。もちろんJohn Beltranがその1人だとは言わないけれど、そう取られてもおかしくはない世迷言のような1枚として本作は存在しているように感じるし、日本盤がリリースされているにも関わらず、おそらくほとんど島国でのリアクションはなかったのではないかと推察される。日本は当時としては、音楽流通の先進国だった。バカみたいにマイナーなインディー作家ですら国内盤としてすりなおされるほどマーケットは醸成されていた。それゆえ、そこで名を刻めなかったのはBeltranにとっては大きな痛手だったと思う。しかしそれを気にするそぶりもなく、様々なスタイルへと変化していきながら、コンスタントに彼は活動を続け、そして僕の耳にもようやく届いたという次第。ちなみにappolloはr&sの下部レーベル。Aphex Twinの"Selected Ambient Works 85-92"をリリースしたことであまりにも有名。ド直球でなくとも、名門レーベルを渡り歩くキャリアの作り方もBeltranの今なお続く信用を高めているのだと思う。